Thanks, Steve.

最初の会社でエンジニアリングの仕事が終わってから寮でマックのプログラミングに明け暮れていたら没収されてしまった。メインフレームの価値観からすればパーソナルな独創性は悪だったからだ。でも、そのコンピューターパワーは既に拮抗していた。マッキントッシュは個人の力が世界を変えられる事を物理的にも可能と信じられたマシンだった。ビジュアルを作成してコーディングをし、そのアプリのプロモーションも自らのツールで直接出来ることを味わってしまえば、もはやコンピュータ・ルームで利用申請しないと情報処理できない環境が時代の彼方に去って行く事は明らかに思えた。
ティージョブズマッキントッシュで成し遂げた事は極東の若造の脳みそに明らかな変化を引き起こしたし、もしもマッキントッシュが存在しなければ僕は未だにコボルで金融システムのスパゲッティコードをお守りする仕事で生計を立て続けていたかも知れない。残念ながらそれは個人の自由な創造性を押し殺す事で成り立っている世界だった。コンピュータの形態はその利用者の思考をも規定し得る。寮の片隅でちょこんと待ち構えてくれていた自分の相棒を愛して止まない。僕は自分の世界観を開放してくれたマッキントッシュと、その生みの親への感謝を生涯忘れないだろう。