【リアルソーシャルは世界を変える。が、どうやって?】

セレンディピティのメカニズムがなぜ重要なのか?の歴史的解釈

「大きく考え小さく行動する。大きな考えで小さな機能を提供する」これが今、僕らのやるべきことではないか?それを幾つかのヒントを元に書き記しておきたいと思います。

「Disruptの楽屋裏でGoogleのMarissa Mayerが将来の"ランダムなおすすめ機能"について語る」 http://jp.techcrunch.com/archives/20110530disrupt-backstage-pass-googles-marissa-mayer-talks-serendipity-and-dodges-the-apple-question/

マリッサメイヤーはTC50/Disruptも常連のGoogle SVPで特にモバイル/ロケーションの新検索分野を担っている人です。彼女は以前からずっとロケーション検索をセレンディピティ(=偶然の驚きがある情報とのエンカウンター)と言うキーワードを用いて説明し続けています。
従来のグーグル検索はあくまで「目的が有って、それに沿った言葉を入力して、重要度に応じた結果を返す(合目的性の高い行為)」ですから、セレンディピティという言葉はかなり遠い概念です。では、なぜその概念が意味を持つのかと言うと、


「位置情報」っておいしいの?
http://jp.techcrunch.com/archives/20091118location-is-the-missing-link-between-social-networks-and-the-real-world/

上の記事(TCでリアルソーシャルを語らせたらMG Sigerですね)で触れられている様に、スマートフォン(ブロードバンドによるモバイルコンピューティング)が、ロケーションの意味情報をいかに巧く扱うか?によって新しい検索(あるいは、検索行為に相当する情報探索メソッド)が、大きく根元から変わる可能性を秘めているからです。

ですから、ツイッターフェイスブックも位置情報系には非常に熱心ですし、Foursquareが現在投資家から大きな成長期待を受けているのも、あるいはInstagramが最初は位置情報メディアとして開発を開始し、今はフォトシェアサービスに落ち着いたとは言え未だに位置情報のフィーチャーを残しているのも、そういったベーシックなモメンタムがあるからです。

そもそも重要なのはキーワードを入力して検索結果を元にウェブブラウジングする体験性がモバイルに合わないこと。そしてPULL的な検索行動よりもPUSH的な(フェースブックウォールやツイッターのタイムラインがKillerアプリですね)ソーシャルグラフの方が今や情報探索行為としては快適で有効であることが明らかになりつつ有ること。これが背景に有ります。

ですから、モバイル以前の段階でさえ既にセレンディピティ的な情報とのエンカウンターが重要度を増しています。PUSHは当然の体験に成りつつ有ります(最近、検索の頻度が落ちていませんか?)それが、モバイルになったとき、果たしてソーシャルグラフだけで本当に有効なのか?の問い掛けが有ります。現実には位置情報のコンテキストが無いまま、単に友達関係のフィルタリングを経た情報では意味を持ち辛いと考えます。

例えば、PULL方式でラーメン屋を探すのは必ずしも快適、的確ではありません(有名店とか行き慣れたチェーン店は別ですが)。また、ソーシャル情報のPUSH方式にしても、自分の居場所と全く無関係ならそれは無意味です(行こうと思っても行けません)。
ですが、位置をセンスして「友達がお薦めしているラーメン屋がすぐ目の前にあるよ!」ならずっと価値がありますよね(この課題設定には「どうやってラーメン屋を好んでいるのか?感知する方法。あるいは、なぜ今その情報が有効なのか?を的確に判別する方法。そもそも友人がラーメンを好きだと言う情報と利用者のステイタス(たとえば空腹でこってり系を食べたいと思っている)とをいかに自然に繋ぎ止めるのか?の方法を突き止める課題が有ります)。

■人がスマートモビリティを獲得したらサーチが変わらざるを得ない必然性とは?

人の行動範囲と交流範囲は必ずしも一致しませんし、そもそも行動可能な位置範囲に対して交遊範囲の与えてくれる情報量は決して多くは有りません(これを充分にする為に交遊範囲を広げると、今度は逆にソーシャルグラフが非常にノイジーになります)。
ですから、検索ー>ソーシャルー>????を考えるには、必ずしもソーシャル視点である必要は無く、むしろ「人が行動し、情報を探索する」パターンにうまく適合し、単に合目的なだけでなく情報探索の喜びや楽しみがあって、参加価値の高い体験性を構築する必要があります。

日本市場ではコロプラを始め位置情報系のサービスは非常に強力(進化の始まりが、明らかに速かった)で、サービス品質やコンセプト面の洗練も相当ハイレベルです。ですが、残念ながらガラケーの枠組みを越えて/あるいはロケーションと言うリアルは、それぞれの国の生活習慣や移動インフラにも左右されますから、日本の情報環境への最適化が逆に禍いする場合もありそうです。

ですから、なかなか世界的なプラットフォームにはなれない(実現可能性は決して低く無い事を付け加えておきます)。その一方で、シリコンバレー/ニューヨーク発の位置情報系あるいは位置情報を用いたソーシャルサービスも、未だに決定打には恵まれていません(ロケーションサービスの一発展系とも言えるモバイルARも同様に苦戦中です)。

FoursquareのCEOはLa Webでのインタビューで「フォースクエアはプアマンズARだ!」と述べているのですが、確かに「チェックインで人がそこにいる事がシェアされる」サービスはある意味限定的な拡張現実と言えます。ですが、それにしてもサービスの全世界的普及に於いては未だに充分な体験性、繰り返し使い続けられる固有の価値軸を提供し切れてはいません。

そういった中フェイスブックがより有効な位置情報共有システム(Facebook Placesは直近アップデートしてFoursquare的なチェックイン・メカニズムを捨て去りました。これは素晴らしい英断ですし、体験性の面でも非常に良い判断ですね)を打ち出しつつ有ります。

また、グーグルもグーグル・サークルという非常にユニークな情報探索/共有メカニズムをリリースして来ました(これはソーシャルグラフに囚われないという点では、フェイスブックよりも先を駆けられる可能性を秘めています)。
アップルもロケーション×ソーシャルの体験性をネットワーキング出来る最高のプレイヤー足り得ますが、残念ながら現状での強力な打ち手はまだ見えていません(が、TwitterのDeepIntegrateなど観ていると相当深い手を準備していると考えられます)。



こういった勢力が開発し続ける、非常に高速度でシャープな方法論が、我々リアルソーシャルの担い手が狙うべき市場のメインストリームです。
そのなかで狼煙の様に広がっていくセレンディピティシステムを構築できるかどうか?そこを描き、本当に世界規模で実現して行ける力をが持てるかどうか?”急速にスケーリング可能な「非常に小さいが大きな市場を創造することの出来る」体験性のコア”を見出すこと、そしてそれの製品展開を通じた世界規模の大戦略を構想し、実践出来る力。これこそがリアルソーシャル系のスタートアップが持つべき、視点・視点だと考えます。
とにかく世界中の誰もが未だに解決策に到達出来ていないのです(グッドニュース!)。しかも、必要な技術と情報は目前に揃いつつ有るのです(ワオ!)。それをいかに組み合わせ、潜在的な大きいニーズに(レーザービームの様に!)照射出来るのか?です。

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