ThinkAct Summit グローバルスタートアップに向けて

ThinkAct Summit から今、戻って来ました。非常に素晴らしいスピーカーの皆さんが一同に会して、とても熱気の感じられる良いカンファレンスでした。そこで幾つかご質問を頂いたので、もう少しブログで詳しくお応えしたいと思います。

■TC50でセカイカメラを発表した時に「パクられたらどうしよう?と思わなかったのですか?」

実はTC50エントリーの時点で、そういった懸念がVC含めて、多くの方から寄せられました。でも、パクられる心配よりも重要なことが沢山あったので僕はストレートに自らのアイデアを開示しました。下に理由を書きます。

1)本質的にそのアイデアを深く理解し、強い情熱を持って世の中に届けられるのは発案者本人です。パクられて困る様なレベルの情熱ではそもそもダメなのでは?

2)製品はアイデアだけでは成立しない。ユーザーに本質的な付加価値をもたらすための改善改良も含めての製品。それも含めて製品にコミットできない限りは駄目。単なるパクリではそういった深いコミットは困難では?

3)自分が確信している程度にその製品の将来的な可能性を確信している人間はそうそういない。その製品の価値が知られて模倣される前にもっと前に進む事を考える方が(プロテクティブにアイデアの保持を気にするよりも)ずっと有効では?

4)製品発案当初のアイデア通りに製品が広まって行く事は稀。実際には使われる中で思わない様な方向にどんどん伸びて行くのが通常なので、実は最初のアイデアを実現する事よりも実際の使われ方を元に変化を遂げて行くことの方が重要では?

そんな風に思います。みなさん、いかがお考えでしょうか?

■日本のスタートアップが世界展開する事の困難さに付いてどう思いますか?

実はグローバル展開は大変だ!と言う思い込みが世の中にあるっていう事は本気で世界展開をしようと思っているスタートアップにとっては有り難いことです。実際その分競争優位に立てますから。ただ、「タイヘンだからこそ価値がある!と言う精神論だけでは突破出来ない部分がある事も事実ですし、情熱や執念だけでは難しい面がある事は真面目に考えれば考えるほど分かって来ます(でも、そこで思考停止して全く行動に至らないままでは非常に空しいですね)。

ただ、本質的に国民性や言語的属性、地域的文化背景、地域的特殊性などに左右されず、ユニバーサルに人の欲求を喚起出来る製品であれば、それをグローバルに展開出来る可能性が常にあります。
あとは、全方位に戦うのではなく、エリアあるいはデモグラフ、または何らかのターゲティングによってマーケットをセグメントすること、さらにはその上で有効なデリバリーの方法を考え抜いて戦略的に実行すること。出来る事は幾らでもありますし、当然そのためのケーススタディはアップルやマイクロソフトの時代から掃いて捨てるほどあります。ですから究極的にはその製品に対しての起業家の情熱に応じて、幾らでも尽くせる手はあると言う事です。

■スタートアップにとってのハイアリングの大変さをどうやって乗り越えたら良いのでしょうか?

たいして知名度も無く、経営リソースにも始終事欠くスタートアップにとってマネージメントやエンジニアの獲得は本当に頭が痛い課題です。ある意味、それ以上の課題は無いのでは?と言う位重いテーマです。なぜなら良い製品を作る上でも、資金獲得をする上でも、会社をチームとしてドライブして行く上でもハイアリングが軌道に乗らない限りどうしようもありません(逆にサーバーやシステムといった箱物的なリソースの獲得は嘘の様に軽くなりました)。

ただ、基本的なスタンスとして「売り込みに行く」というスタンスでは何事も成立し辛いと言う事を経験則的に思います。そこで働きたい!と思ってもらう為には、ひたすら頭を下げたり条件交渉したりという手間隙よりも何よりも、その事業がいかに世の中に取って重要なのか?世の中の人達に取って大切なのか?こそを理解してもらう必要があります。
そのためには、素晴らしいアイデアを素晴らしいプロダクトにして素晴らしいと思ってくれるユーザーを一人でも多く獲得するべきです。良いアイデアが良い製品になり、それを多くのユーザーが愛してくれれば、それを提供する為に頑張るインセンティブは経済的な側面だけでなく(例えば素晴らしい仕事を通じて賞賛を受けたいと言うのもインセンティブのひとつです)幾らでも提供できます。

ですから、基本的には、売り込みや条件交渉以前に素晴らしいアイデアを素晴らしいプロダクトにすることに邁進するのが最も近道と思います。そして、そのために独自で個性的なビジョンやコンセプトを携えて起業する意味はあるのではないかと思います(ビジョンやコンセプトは良い製品を担保しないが、それを考え続けるための良い問い掛けを含んでいる場合があります)。
本質的に「新しい価値をどのような新しいメカニズムを通じて提供するのか?」その着眼点の良さが最初にあったとしても、如何に現実化するのか?はチームの力に多くを依存しています。でも逆説的ですが、その着眼点の良さこそがより良い人を呼び込む力をもっている場合があります。

■domoをなぜ作ろうと思ったのですか?そして、それはセカイカメラとどういう関係なのですか?

domoは、「そこにいる人達がお互いの興味関心をシェアして、さらにはコネクションできる様にする」製品です。そこのベースにあるのは「人間社会が透過的にお互いを共感出来る社会になると良い=スケスケ社会への展望」です。
僕自身は、そういう世界観をウェブの黎明期から面々と続いているある種のオプティミズムだとも思っていて、その信念はきっとグーグルやフェイスブックとも共有可能な価値観だと感じています。

ですから、「domo」の価値観はセカイカメラ開発の動機付けと全く同じ価値観に立脚しています。また、「domo」はオープンなAPIとして提供予定です。
セカイカメラは"domo API"を通じて、人と人とのエンカウンターをもっとビジュアルに伝え易く出来ると考えています。「domo」はセカイカメラの使いどころを増やすでしょうし、世界の可視化と言う同じ価値観をより一層前進させるうえで、非常に大きな役割を果たすだろうと思っています。

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