南南西に進路を取れ! SXSW 2011を振り返る。

SXSWを説明するのはとても難しい。他に似た存在が無いからと言うのも有るのだけど、それ以上に難しいと感じるのは、全体像が余りに大きくてどうしても"群盲像を撫でる"になってしまうからだ。

シンプルに外観的説明をするとしても「音楽と映画とインタラクティブの祝祭」「世界中からクリエーティブな人間が10日間に渡り、数万人規模で集結してオープンに繋がり合える場」「都市全体がライブパフォーマンス会場になる国際的ショーケース」「TwitterFoursquareがグローバル・ブランドとして躍り出た登竜門」など、幾らでも特徴を挙げられる。

土曜夜にBS ASAHIのSTYLEBOOKという番組でSXSW 2011の模様が取り上げられたのだけど、あの一瞬の切り取りだけでも「ロリータ18号に代表される日本のインディーズが受けている事」「あのフロッグデザインがインタラクティブなショーケースを展開している事」「FoursquareTwitter がCOLAと組んでユニークなハイパーローカルキャンペーンを仕掛けている事」など、それぞれ興味深い事象が浮かび上がって来る。

でも、現実にはその数千倍?の数え切れないイベント、ライブパフォーマンス、各種カンファレンス、パネルディスカッション、デモ、キャンペーン、レクチャー、トレードショー、パーティなど、考えられない様な規模で繰り広げられている。それが音楽フェスだけを取っても国際三大イベントと言われるスケールなのに、それに加えて国際映画祭(サンダンス映画祭と比べられる事が多いそうだ)、今や TechCrunch や VentureBeat、Mashable などがチームで取材陣を送るレベルの扱いになっているインタラクティブが重なりつつ、ウネリを作りながら開催されているのだ。

今年のSXSW 2011には頓智はトータルで国内から5名。現地スタッフも入れると総勢10名規模で積極参加を果たし、パネルディスカッション(2セッション企画した)だけでなく、トレードショーやデモ・イベント、屋外でのパフォーマンス、クラブを借り切ってのローンチパーティなど可能な限りの仕掛けを仕掛けた。それはもちろんリアルソーシャル製品の「domo」を世界規模のサービスとして売り出す為の作戦として実施したのだけど、そこで得られた収穫は本当に想像以上だった!

【リアルソーシャルは世界を変える。が、どうやって?】

セレンディピティのメカニズムがなぜ重要なのか?の歴史的解釈

「大きく考え小さく行動する。大きな考えで小さな機能を提供する」これが今、僕らのやるべきことではないか?それを幾つかのヒントを元に書き記しておきたいと思います。

「Disruptの楽屋裏でGoogleのMarissa Mayerが将来の"ランダムなおすすめ機能"について語る」 http://jp.techcrunch.com/archives/20110530disrupt-backstage-pass-googles-marissa-mayer-talks-serendipity-and-dodges-the-apple-question/

マリッサメイヤーはTC50/Disruptも常連のGoogle SVPで特にモバイル/ロケーションの新検索分野を担っている人です。彼女は以前からずっとロケーション検索をセレンディピティ(=偶然の驚きがある情報とのエンカウンター)と言うキーワードを用いて説明し続けています。
従来のグーグル検索はあくまで「目的が有って、それに沿った言葉を入力して、重要度に応じた結果を返す(合目的性の高い行為)」ですから、セレンディピティという言葉はかなり遠い概念です。では、なぜその概念が意味を持つのかと言うと、


「位置情報」っておいしいの?
http://jp.techcrunch.com/archives/20091118location-is-the-missing-link-between-social-networks-and-the-real-world/

上の記事(TCでリアルソーシャルを語らせたらMG Sigerですね)で触れられている様に、スマートフォン(ブロードバンドによるモバイルコンピューティング)が、ロケーションの意味情報をいかに巧く扱うか?によって新しい検索(あるいは、検索行為に相当する情報探索メソッド)が、大きく根元から変わる可能性を秘めているからです。

ですから、ツイッターフェイスブックも位置情報系には非常に熱心ですし、Foursquareが現在投資家から大きな成長期待を受けているのも、あるいはInstagramが最初は位置情報メディアとして開発を開始し、今はフォトシェアサービスに落ち着いたとは言え未だに位置情報のフィーチャーを残しているのも、そういったベーシックなモメンタムがあるからです。

そもそも重要なのはキーワードを入力して検索結果を元にウェブブラウジングする体験性がモバイルに合わないこと。そしてPULL的な検索行動よりもPUSH的な(フェースブックウォールやツイッターのタイムラインがKillerアプリですね)ソーシャルグラフの方が今や情報探索行為としては快適で有効であることが明らかになりつつ有ること。これが背景に有ります。

ですから、モバイル以前の段階でさえ既にセレンディピティ的な情報とのエンカウンターが重要度を増しています。PUSHは当然の体験に成りつつ有ります(最近、検索の頻度が落ちていませんか?)それが、モバイルになったとき、果たしてソーシャルグラフだけで本当に有効なのか?の問い掛けが有ります。現実には位置情報のコンテキストが無いまま、単に友達関係のフィルタリングを経た情報では意味を持ち辛いと考えます。

例えば、PULL方式でラーメン屋を探すのは必ずしも快適、的確ではありません(有名店とか行き慣れたチェーン店は別ですが)。また、ソーシャル情報のPUSH方式にしても、自分の居場所と全く無関係ならそれは無意味です(行こうと思っても行けません)。
ですが、位置をセンスして「友達がお薦めしているラーメン屋がすぐ目の前にあるよ!」ならずっと価値がありますよね(この課題設定には「どうやってラーメン屋を好んでいるのか?感知する方法。あるいは、なぜ今その情報が有効なのか?を的確に判別する方法。そもそも友人がラーメンを好きだと言う情報と利用者のステイタス(たとえば空腹でこってり系を食べたいと思っている)とをいかに自然に繋ぎ止めるのか?の方法を突き止める課題が有ります)。

■人がスマートモビリティを獲得したらサーチが変わらざるを得ない必然性とは?

人の行動範囲と交流範囲は必ずしも一致しませんし、そもそも行動可能な位置範囲に対して交遊範囲の与えてくれる情報量は決して多くは有りません(これを充分にする為に交遊範囲を広げると、今度は逆にソーシャルグラフが非常にノイジーになります)。
ですから、検索ー>ソーシャルー>????を考えるには、必ずしもソーシャル視点である必要は無く、むしろ「人が行動し、情報を探索する」パターンにうまく適合し、単に合目的なだけでなく情報探索の喜びや楽しみがあって、参加価値の高い体験性を構築する必要があります。

日本市場ではコロプラを始め位置情報系のサービスは非常に強力(進化の始まりが、明らかに速かった)で、サービス品質やコンセプト面の洗練も相当ハイレベルです。ですが、残念ながらガラケーの枠組みを越えて/あるいはロケーションと言うリアルは、それぞれの国の生活習慣や移動インフラにも左右されますから、日本の情報環境への最適化が逆に禍いする場合もありそうです。

ですから、なかなか世界的なプラットフォームにはなれない(実現可能性は決して低く無い事を付け加えておきます)。その一方で、シリコンバレー/ニューヨーク発の位置情報系あるいは位置情報を用いたソーシャルサービスも、未だに決定打には恵まれていません(ロケーションサービスの一発展系とも言えるモバイルARも同様に苦戦中です)。

FoursquareのCEOはLa Webでのインタビューで「フォースクエアはプアマンズARだ!」と述べているのですが、確かに「チェックインで人がそこにいる事がシェアされる」サービスはある意味限定的な拡張現実と言えます。ですが、それにしてもサービスの全世界的普及に於いては未だに充分な体験性、繰り返し使い続けられる固有の価値軸を提供し切れてはいません。

そういった中フェイスブックがより有効な位置情報共有システム(Facebook Placesは直近アップデートしてFoursquare的なチェックイン・メカニズムを捨て去りました。これは素晴らしい英断ですし、体験性の面でも非常に良い判断ですね)を打ち出しつつ有ります。

また、グーグルもグーグル・サークルという非常にユニークな情報探索/共有メカニズムをリリースして来ました(これはソーシャルグラフに囚われないという点では、フェイスブックよりも先を駆けられる可能性を秘めています)。
アップルもロケーション×ソーシャルの体験性をネットワーキング出来る最高のプレイヤー足り得ますが、残念ながら現状での強力な打ち手はまだ見えていません(が、TwitterのDeepIntegrateなど観ていると相当深い手を準備していると考えられます)。



こういった勢力が開発し続ける、非常に高速度でシャープな方法論が、我々リアルソーシャルの担い手が狙うべき市場のメインストリームです。
そのなかで狼煙の様に広がっていくセレンディピティシステムを構築できるかどうか?そこを描き、本当に世界規模で実現して行ける力をが持てるかどうか?”急速にスケーリング可能な「非常に小さいが大きな市場を創造することの出来る」体験性のコア”を見出すこと、そしてそれの製品展開を通じた世界規模の大戦略を構想し、実践出来る力。これこそがリアルソーシャル系のスタートアップが持つべき、視点・視点だと考えます。
とにかく世界中の誰もが未だに解決策に到達出来ていないのです(グッドニュース!)。しかも、必要な技術と情報は目前に揃いつつ有るのです(ワオ!)。それをいかに組み合わせ、潜在的な大きいニーズに(レーザービームの様に!)照射出来るのか?です。

We can Change the World !!

散歩しながら考える新製品。

昨日のキックオフイベントで思い返した事なのですが、セカイカメラのそもそもの発想のトリガーは「クラウド上にあるデータを現実に映し出すカメラがあれば視覚体験そのものが大きく変革されるに違いない」と言う散歩中の思いつきでした。

若干余談ですが約160年の歴史を持つ光学式カメラのメカニズムは基本的な仕組みとしてはデジカメに進化を遂げた後もほぼ変わっていません。光学的にレンズが捉えたイメージをフィルムに焼き付けるのか、それともデジタルメモリーに蓄積するのか?の違いこそあれ、視覚イメージを光学的に捉えて定着すると言う点では全く同じです。
ところが現実空間にまつわる情報の網の目は日々顕著に増大していますしソーシャルネットワーキングはどんどん位置情報付きのLocal Graphに深化しつつ有る所ですから「現実空間をクラウドで強化するイメージ装置」は多くの制約はありながらも可能になっています(2008年時点では、正直まだまだ怪しかった訳ですが)。
つまり、光学式カメラのその先にあらゆる現実世界情報を目の前の現実に映し出す「視覚の拡張ができる」カメラは創意工夫次第で幾らでもデザインし得る。それこそ"カメラの再定義"を出来るチャンスが開かれています。

カメラの再定義って?

そういう視点で観るなら、Instagram は新しいカメラなのかも知れません。Instagram は組み込みのフィルターで非常に簡単に自分の写真を拡張(美化)してくれる。その結果、お互いが写真による創造性を通じて繋がり合える。または、その創造性を介して新しいタイプのコミュニケーションが出来る。そういうカメラだと言えます。
僕自身はFlickrヘビーユーザーなので、最初に Instagram を触った瞬間に「Flickrとどこが違うの?機能的にもすごくプアだし、ソーシャル性も低い!」と感じました。でも、使い続けると「フィルターでかっこ良くなった写真をシェアする体験は素晴らしい、毎日の視覚体験を楽しく彩ってくれる。クリエーティブな気分で楽しめる」ことを強く感じました。
ですから InstagramiPhone の機動力と操作性を活かす事でデスクトップで行われる写真共有とは異なる固有の価値軸を提供しているのです。それはつまり、「よりクリエーティブに写真撮影を通じたコミュニケーションが可能になる」カメラ体験を実現しているのだと思います。その場でフィルタリング出来るだけでこんなにカメラが拡張できるんですね(市販のデジカメの画像加工は非常に面倒だし、そもそもその場で友人とコミュニケーションなど出来ません)。

Instagram 対 Color

それに比べて(TCでも良く話題に上る)Colorの場合は「いったいどんな体験を拡張しているのか?」が分かり難い分、ストレートにその魅力を感じ辛く伝え辛いように思います。
ColorはいわゆるProximity(近接性)を用いて SocialGraph とは異なる情報のエンカウンターを体験出来ます。ただ、近接関係で視覚イメージを共有するという体験は日常的な感覚の延長線にすっぽり収まらないので、なかなかその価値観を味わうのは大変です。
とは言え、TwitterのTLみたいになかなか日常に説明し辛いメタファで素晴らしいソーシャル体験やコミュニケーションを実現している例もありますから、一概に「日常の延長に想像し辛いのでその価値を味わい辛い ... 」というダケで語り切れない面もあります。が、いずれにしろ(Twitter もその普及にはかなりの時間を要しましたね)そういった新規な体験性は最初広がるのに非常に苦労をしてしまいます。

ひとまず、全く新しい体験性をいきなり持ち込むより、むしろ既にあるよく知られたデバイスをソーシャル化する。あるいはクラウドに繋ぐ事でコミュニケーションが可能になる。などの思考方法で、いきなり新しい体験性に到達出来る。しかも、比較的容易にその新しい価値観に馴染むことができる。「ホニャララの再定義」にはそういう良さが有ります。皆さんもカメラの再定義に限らず、「ホニャララの再定義」を考えてみませんか?新製品を考えるときの発想法としては(アイデアの刺激と言う点でも)結構面白いと思いますし、クラウドソーシングやソーシャルグラフを簡単に接続出来てしまう現在、ちょっとした工夫の仕方で思いがけないヒット製品を実現出来る可能性があると思います。

秋葉原でキックオフ!

今日は「KDDI ∞ Labo」のキックオフイベント" 1st MEETing"でした。大変大勢の皆さんにお越しいただき、本当にありがとうございました。短い時間とは言え、かなり密度の高い濃密なカンファレンスになったのではないか?と思います。とは言え、キックオフのその先、実際のインキュベーションが始まってからが勝負だと思います。ぜひ、意欲の有る皆さんのご応募をお待ちしております!

イベントのツギャッターはこちら http://togetter.com/li/152378

∞ラボ(無限ラボ)キックオフ

KDDIさんが新たにスタートされる「KDDI ∞ラボ(無限ラボ)」のキックオフイベント( 2011年6月21日 (火) 14:30〜 )に登壇します。ぜひお越し下さい。熱く語り合いましょう!

http://www.kddi.com/mugenlabo/event/index.html

凄いスタートアップの作り方 頓智流シリコンバレー起業術

どうやったら凄いスタートアップを立ち上げられるのか?これは世界規模で新しい価値観を届けたい!と思っている起業家にとっては永遠の課題だと思います。
TC50 以来の知古 Seth Sternberg ( Meebo CEO )は「「スタートアップCEOが最初にやるべきことはサンドイッチを買うことだ」」と、なかなか示唆的な記事を寄稿しているのですが( スタートアップの立ち上げ前、CEOの仕事はサンドイッチを買うことだった )、スタートアップを果たしてどこから始めるのか?というのは思ったよりも大きなテーマです。

IVS 2011 Springではシリコンバレーパネルに参加したのですが、時間の制約も有って突っ込んだ方法論には踏み込めませんでした。で、もしも、"どうやってシリコンバレーで成功するベンチャーを作るのか?"を考えるのであれば、(日本で始めるよりはいっそ)シリコンバレーで起業するのは非常に理に適った方法ではないかと考えます。
そのエコシステムへと入って行く為には、まさに「そこに住み、そこで人を集め、そこでお金を集め、そこで仕事をする」ことが最も近道であり、最もディープにコミット出来ます。我々のチームはこの春サンフランシスコを拠点に動いていたのですが、ベイエリアスマートフォン×ソーシャルの起業をするエリアとしては非常に適していますし、そのための拠点に事欠きません。

例えば、下のブログに簡単に記事化されているように Co-Working Space を利用するのは、最もスピーディで効果的な方法ではないかと思います。サンフランシスコのSOMA界隈にはこういったシェアリングオフィスが多く、単に便利なワークスペースというよりはもっと刺激的で競争的なコミュニティを形成しているのです。
まさにそれ自体がフレネミー(Friend&Enemy)の競争&協力の環境をかたちづくっていて、日々休むこと無く新しいイノベーションが起こっています。
http://www.backlog.jp/blog/2011/05/post-15.html
ブログに掲載されているのは下のようなスペースなのですが、僕達は Rocket SpaceとDog Patch Labs およびそのご近所の ParisSOMA に出掛けて体験した後、Dog Patch Labs のお隣にある Opinno にベースキャンプを構えました。

  • The Hub SOMA
  • Citizen Space
  • Dog Patch Labs
  • Rocket Space
  • Next Space

これらのスペースはそれこそ(場所により条件は異なりますが)時間借りも出来ますし、ビジネスの成長に応じて使い分けることも可能です。
たとえば、Dog Patch Labs と我々頓智が借りた Opinnno および Socialmedia は同じ「Pier38」にあるのですけど、基本的には本当にシードの段階のスタートアップ向き。たとえば CEOとCTO だけ!みたいなガレージな段階が合っている様に感じます(例: Instagram はここ=Pier38の卒業生です)。
僕達もごく少数で入居していたのですが、ちょうどサービス開始した Yobongo チーム(コアの二人が始めたばかりの初々しいチームでした)と日々切磋琢磨していました。

あの Uber Car などが入っている Rocket Space はそれよりもう少し成長した、ラウンドA以降のスタートアップが合っている様で、実際インテリアやオフィスのムードもPier38のスペースよりは落ち着いて静かです(Pier 38はそれに比べるとかなり混沌としています)。

ただ、とにかく重要なのは場所や箱とかじゃなく、あるいは会社としての体裁などではなく、熱いアントレプレナーががむしゃらに新しい(世界を変える可能性のある)製品を抱えて走り続けていることであり、これらの場所で、そういったクレイジー起業家たちが夢中に製品を作りまくっていることなのです。
それは利益追求と言うよりは、もはやある種の社会運動ではないかと感じます。アントレプレナー達は社会活動家のやっていることをもっと先鋭的に企業活動として繰り広げているのではないかとさえ感じます。

そして、なかなかニュアンスの伝わり辛いシリコンバレーの生態系、個人的には先ほどの「フレネミー」という言葉が非常にしっくり来るのですが、競争と協力が常に繰り返されている独特のエコシステムを理解するには、こういった場所で短期間でも良いから働いてみることが最速なんじゃないか?と思うのです。
とにかく出掛けて行って、交渉してみて、都合良く場所が手に入ったらどんどん臆せず対話してみる。何かお互い出来そうなことを語り合ってみる。それだけで世界観は相当変わると思います。あるいは、「会社」や「組織」、「事業」や「起業」の捉え方、考え方がガラッと変わるかも知れません。

そう、"行動することで思考は変わる"んです。考えることで変わることよりも、もっと本質的にマインドセットが変わる可能性があります(競争を通じた淘汰への抵抗ですから真剣にならざるを得ません)凄いことを始めるには凄い場所に出掛けてみる。そして、凄い場所で働いてみる。そういう方法を検討してみてはどうでしょうか?(百聞は一見にしかず!)

頓智流プレゼンテーション禅

IVS 2011 Springのシリコンバレーパネルで発表したのは「domo」アプリをローンチしたLaunch Conferenceでのプレゼンの模様を録画したビデオでした。
Domo: The one Launch presentation you must watch (video) | VentureBeat
たった4分のプレゼンテーションとは言え、都合三回にわたって書き直したスクリプト。200回以上トレーニングして本当に魂を込めたピッチでした。
パネルディッカッションでは余り詳しく触れる事が出来なかったので、このVersion 4(ここに至るまでは本当に大変でした)のプレゼンスクリプトに仕込んだメカニズムを説明してみようと思います。
一見ぶっつけ本番の様に見えるプレゼンなのですが、案外(笑)しっかりと時間を掛けてプレゼンテーションの効果を最大化するための工夫を盛り込んでいます(盛り込むと言うよりは、練り上げるとか磨き上げるって感じかも知れません)。

1)ストーリーを作る。しかもできるだけジブンゴトにしてもらう。

このプレゼンはLAUNCH CONFERENCE IS GREAT! BUT SOMETHING IS WRONG... というイントロから始まります。「これだけスゴイ連中が勢揃いしている。なのに(物理制約のせいで)コネクトし合えない。これじゃあ世界を変えられないじゃないか!」っていう問題提起をとにかく熱く投げかけるのがプレゼンの入り口になります。ここでは、その訴えをとにかく切実に受け止めてもらうことが大切です。

3分ほど後、プレゼンの終わりには「コネクトできて良かった!」「(その場でお互いが繋がり合える事で)僕達は世界を変えられるんだ!」というエンディングが待ち構えているのですが、その出口に向けて走り抜ける為には、痛烈に問題意識をシェアしてもらうための伏線を貼る必要があります。世界を変えるテクノロジーを求めて集っているオーディエンスに向けて心を込めて語りかけます。

2)ビッグピクチャーを示す。しかも具体的な比較をしてもらう。

世の中ソーシャルなツールはたくさんありますし、当然普段から思い切り使っている人たち(二千人近くのアントレプレナーを相手にしていることをイメージしてみて下さい)を相手に話している訳ですから「別にコネクトするのは簡単な事で、既に解決済みじゃないか?」と思われてしまう可能性が高い筈ですね。そして、それではストーリーが力強く動いて行きません。
そこで「フェイスブックではその場でコネクト出来ないよね」「フォースクエアでメイヤーになっても、まるで意味が無いよね」など、具体的なリファレンスを示します(USELESS!を連呼します)。そして、それを通じて「現実空間でのエンカウンターって、ソーシャルなアプリケーションとして実は大きなニッチじゃないのか?」という少し大きめの見取り図/俯瞰を共有してもらいます。単に大風呂敷を拡げるだけでなく既存のサービスが役に立たないじゃないか?と言う対比を浮き彫りにすることでリアリティが伝わります。

3)ピークを作る。心に残る言葉を持って帰ってもらう。

問題提起をし、(既にあるツールでは解決不能な)困難を示した後は大団円に向けて疾走します。つまりdomoでお互いがコネクトしてようやく世界を変えられるんだ!という実感を感覚的に伝達出来るプレゼンテーションで締めくくります。ここではアプリケーションの操作感覚を「ブン!」とインパクトを持って伝える事によって、簡単には忘れられない記憶を刻み込みます。

この「ブン!」という掛け声は、あのスティージョブズもプレゼンで多用する印象深い擬音です(彼のビデオをぜひ見直してみて下さい)。
実はこんなに受けるとは思っていなかったのですが、プレゼン後のサンフランシスコだけでなく、その少し後に開催されたSXSW 2011(テキサス・オースティン)でもしょっちゅう「ブン!ブン!」挨拶をされるほどに広がりました。しまいには「Hey! Boom Guy!」と声をかけてもらえるほどに記憶に残っていたファンもいた程です。
このケースはプレゼンテーターの想定を越えて巧く伝わったケースですが、逆にインパクトがあり過ぎてアプリの名称は「domo」よりも「boom」の方がいいんじゃないか?と多くの方々からご指摘いただきました。流石にそこまで受けてしまうと若干「!?」な感じもしますが、小さくまとまるよりは良かったのではないかと思います。
以上が、僕なりのプレゼンテーション禅です。少しでもお役立て頂けると幸いです。


LAUNCH CONFERENCE IS GREAT!
BUT SOMETHING IS WRONG...
IT IS TOO DIFFICULT TO CONNECT WITH OTHERS!
IT TAKES TOO MUCH TIME!
THERE ARE SO MANY GREAT PEOPLE HERE!
GREAT IDEA!
GREAT TECHNOLOGY!!
WE CAN CHANGE THE WORLD!
WE NEED TO CONNECT!
I WANT TO CONNECT TO YOU! YOU! YOU!
I DO NOT GOOGLE SEARCH TO CONNECT!
USELESS!
FACEBOOK PLACES SHOW FACE ICON!
USELESS!
FOURSQUARE MAKE ME MAYOR!
USELESS!
WE BRING DOMO!
TOKYO BRING REAL FUTURE TO YOU!
I START DOMO NOW.
DOMO SHOW PEOPLE, HERE AND NOW!
DOMO SHOW INTERESTS, HERE AND NOW!
YOU AND ME, MATCH!
WHO GOES SOUTH BY SOUTHWEST? RAISE YOUR HAND!
WHO IS STANFORD? RAISE YOUR HAND!
WHO LIKE SOCIAL NETWORK MOVIE? RAISE YOUR HAND!
DOMO SHOWS THAT! VERY EASY!
I FIND YOU!
I SEND "DOMO" TO YOU!
BOOM!!!
YOU RECEIVE NOTIFICATION!
YOU SEND DOMO BACK!
BOOM!!!
WE JUST CONNECT!
IT TAKES ONLY 10 SECONDS!
THAT IS ALL! REALLY SIMPLE.
WE CONNECT! WE CAN CHANGE THE WORLD TOGETHER!
WORLD BECOME "LOVE AND PEACE"!
DOMO ARIGATO!
THANK YOU!