日本の拡張現実が新しいガラパゴス環境にならない為に

iPhone OSのバージョンアップによる拡張現実アプリケーションの普遍化(の可能性)が脚光を浴びています(http://www.engadget.com/2009/07/24/iphones-augmented-reality-apps-coming-with-september-os-3-1-lau/)。
もちろん、これはまだ小さな第一歩に過ぎないのですが、それでも「現実空間を通じたネットワーク空間へのアクセス」を実現する事による新しい産業の創造という点では非常に大きな一歩になるのでは?と思います。

頓智・としてはiPhone OSがARアプリに対応するための具体的方法論として、ビデオイメージへのアクセス公開を求めるオープンレターを通じた(あるいは、それ以外のルートも通じた)アップル社への働きかけを行っています。

これは今年、「拡張現実」がいかにしてiPhoneに新しい機会をもたらすのか?を示しています。
http://gamesalfresco.com/2009/07/02/open-letter-to-apple-let-us-augment-reality-with-the-iphone/

また、この7月7日にスタートしたばかりの「ARコンソーシアム」では、これからの国際的なデファクト・スタンダードを巡って検討を進めるアクションに参画をしました。

ARコンソーシアムのメンバーのためにフォーラムを提供するなどしてアイデアを共有し、議論を行い、業界の成長だけでなく、新たな標準規格やプロトコル等についてのダイアログを開始します。
http://www.arconsortium.org/

さらに、慶応大学およびIAMAS有識者達によって設立された「AR Commons」を通じて「公共圏」という視点からAR空間の成長を促進する試みに賛同しています。

21世紀社会の情報・テクノロジー環境に適合した新たな学術研究、生活提案を実現するプラッ トフォームとしてAR(Augmented Reality)技術を快適に利用するための 多次元的空間創成と活用を促進する非営利の任意団体です。
http://arcommons.org/

この間のARを巡る動きとして非常に特徴的なのは、米国(シリコンバレー)以外からの動きの方がむしろ顕著であるという点。しかも、既にそれらのプレイヤー達が上記の試みなどに明らかな様に早くからお互いに情報交換をしながら市場開拓に取り組んでいるという点です。

いままで、日本のウェブエコノミーと携帯産業は、ある種独特の成長と発展を遂げてきた訳ですが、拡張現実という新しいコンテンツプラットフォームに於いてはその端緒から世界的水準にキャッチアップしてきたという(短いとはいえ貴重な)歴史を持っています。
そういう意味ではエアタグ・コンテンツは、国内市場に閉じた“ガラパゴス”的展開ではなく、最初からグローバルな広がりと多様性をもった進化を遂げていく事が出来る可能性に向き合っていると言えます。

「日本企業は個別の独自仕様的な差異化を通じた競争は得意だが、世界標準的な共通仕様上の差異化による付加価値の創造は苦手だ」というような指摘をブログで発見して(元記事を見つけられず、リファレンスできません。すいません!どなたかご存知の方はお教え下さい 。※1:多少意味合いは異なりますが、林信行さんのこの記事など貴重なご指摘だと思います)、「なるほどな〜」と思ったのです。
今はまだ何も見るべきものが何も存在し無いAR空間ですし、これからきっと面白くなる新しいネット環境の黎明期に直面しているという願っても無い状況なワケですから、同じ過ちを繰り返さないようドンドン手を結んでいきませんか?(各AR関係者の皆様!)

データポータビリティやAPIの相互運用など出来る事はいろいろありそうですし、日本がイニシアティブを先導できる分野も少なからずあると考えます。そのためのツールとして上記のコンソーシアムやコモンズを使いこなしていくといいのでは?と思います。

ちなみに添付した図はAR空間の市場化見取り図(※自分的アイデアを整理するとこうなります)です。矢印は収益化のベクトルを差しています。

1)ソーシャルタギングという空間型のCGMから始まる収益化 2)ランドマーク的なエアタグが企業ユースに成長していくことによる収益化、これらがエアタグ収益化の大きな流れになると考えています。

要するにオーバーレイ型のARという新規性やUI部分の使い勝手が素晴らしいといった仕様的差異はもはや当然の前提になる筈なのです。むしろ、その先の「データストリームをどのような形で集積化&事業化するのか?」のセカンドフェーズ(標準化された環境化の競争)にすぐに移行するだろうというのが現時点でのリアル予想です。

そのための競争環境(各種商用化プラットフォーム)が、来年の夏までにはすべて現出するのでは?と思っているところです。そしてこういった国際的な競争環境の場合、手を打つのが遅くなればなるほど挽回する為のコストは急激に高騰していくのです。PC OSやGUI、CPUやメモリー、モバイルOSやコンテンツプラットフォームなどすべてがそうだった筈です。

※1:nobilog2:以前からあった機能を特別にするiPhoneマジック」にある“「ただ搭載した機能」と「人々が使う機能」は別物”という部分など非常に示唆的なご指摘ではないかと考えます。