セカイカメラの市場戦略

昨日の講演「モビリティとリアリティ〜空飛ぶケータイとクリックできる世界」では、非常に示唆的なご質問をいただきました。その場で十分にお応え出来なかった部分も盛り込んで、自分なりのご回答をブログ上でさせていただきたいと思います。
ご質問内容は僕なりに拡張解釈して、かなり汎用的な内容に組み立て直しています(ですので回答内容も大意は同じだとしても、もっと広範な内容をカバーできるように再構成しました)。

■競争環境について

普通に考えて「任天堂」「ソニー」「マイクロソフト」「ドコモ」「ノキア」「グーグル」など世界的な巨人達とガチで勝負という世界だと思っています。それこそグーグルの場合はストリートビューの映像をリアルビューにしてしまえばそれだけで完了!という見方をしています。でも、究極的にはそういったテクノロジー企業はイノベーションを共にするという点では、むしろ敵対関係というよりは共存関係と考えた方がしっくり来ます。

つまり市場内競争を通じて全体的なイノベーションの最適化のような状況がむしろ望ましい訳です。それよりも市場外の問題、たとえば文化的習慣や政治的な軋轢、調整段階の方がとても恐ろしく、仮にひとりの児童がエアタグを通じたやりとりで誘拐された等の社会的にインパクトのある事件などによってエアタグ規制されてしまう..そんなシチュエーションの方を懸念します。
ストリートビューを巡る喧噪などその分かり易い一例で、そこではイノベーションそのものよりもイノベーションを受け入れる上での社会的準備段階のストレスが取り沙汰されている訳ですね。

キャズムについて

国際的な競争環境を考えると二億人くらいのユーザーベースをいつ獲得出来るのか?が課題になるだろうと考えています。そういった意味でも従来の「技術をブラックボックスとしてロックインする事によって競争を排除していく」方法論ではなく、オープン&フラットな技術の共有拡散を通じてワールドワイドなマッシュアップを進めて行く必要性を感じています。
つまり「できるだけ使わせない技術」から「無茶苦茶使ってもらう技術」を共有して行くアライアンスを積極的に進める必要性、必然性をとても重要だと考えています。

■ゲーム業界について

実はゲーム業界からのアプローチはロケーション系の皆様からのアプローチと同様非常に多くあります。それはすごくあり難い事で、POIを現実空間にいかにスマートに展開するのか?が実現出来る大切さと並んで、(「便利さ」よりもむしろ「楽しさ」を追求したい)セカイカメラとしては非常に可能性を感じる分野なのです。
現実空間をゲームフィルターによって仮想現実化するという方法論は従来のゲームの体験性と対象領域(=ユーザーと市場)を拡張していくうえでとても有効なアプローチだと確信しています。

■日本企業について

現時点では、上記の業界の皆様だけでなく、キャラクターコンテンツを扱われている企業の皆様ともお話を進めています。これはやはり日本の輸出品としてはとても有望な領域で、拡張現実的なコミュニケーション&コミュニティにエアキャラクターを遍在させていくというコンセプトには相当なポテンシャルがあると感じています。
また、そういった試みに向けてWBC的なドリームチームを形成できれば素晴らしいプロジェクトを実現出来るのでは?という手応えがあります。ある意味、日本企業の底力を感じます。

■ターゲットユーザーについて

「生まれた時に無かった物がイノベーションなのだ」というようなことを以前アランケイが述べているのですが、これからは「エアタグが当たり前に存在するコドモ達」の時代が到来するのではないか?と思っています(多少妄想が入っていますが..)。
実際、コドモ達がセカイカメラを使いこなす際に見せる「新しい世界感に入って行くスムースさ」「楽しみを自らが発見する創造性」は開発者の想定を超えています。

さらに言いますと、そういったデバイスや情報環境があることが前提になった場合、都市景観や生活習慣などにもさまざまなフィードバックがあるのではないでしょうか?ですので、これからの未来のコンピューティングはコドモ達と共に造って行く、そういうポリシーが原則有効なのかも知れません(たとえば、ARゲーム的なアプローチなどを通じて)。
現在の大人達は基本的には「生まれた時になかったものを想像する」能力は余り期待出来無い様に思うのですね。