パリは萌えているか?

今週は麹町のブイグテレコムさん(フランス第三位の携帯キャリア、日本のソフトバンクと同じ様なポジショニング)に出掛けてきた。3月にセルリアンタアーで行う予定のフランス企業家(コンテンツプロバイダー)とのマッチングを促進するエディターカンファレンスへのご招待をいただいたからなのですが、逆に NetExplorateur 10へもご招待さしあげることに。なんだかフランスの企業が日本にやって来るイベントに誘われ、日本の企業がフランスに招聘される機会にフランス企業を招待する..なんて奇妙な組み合わせです。

それにしてもフランスのテレコムはアツい!彼らは既にi-modeのフランス国内展開に着手し、コンテンツ課金で成功を収めている日本のモバイルマーケットおよびそのプレイヤーに対しては非常に強い期待感を持って臨んでいる。現に上のカンファレンスに招かれている国内企業はそうそうたるメンバーで、これらが全部(はあり得ないだろうけど)フランスで成功を収めればとても面白いことになるだろうと思う。
また、同時に独自のウェブ文化を誇るフランスのベンチャーが日本進出に意欲的だとすれば、それはそれで新しいムーブメントが起こりうるのかも知れないですね。

まだ、正直実感は無いのだけど、フランスからのいろいろなアクセスが増えていることは事実で、もしかすると米国とのコミュニケーションよりもいまやホットなのではないかと思う。来週はパリで開催されるマーケティング2.0のオーガナイザーがわざわざ来日してくれることになっており、今年前半はパリからいろんなことが始められそうだ。

かつてのジャストシステム在籍時にはフランスとのビジネスについてそれなりに接点があって、それはなぜかというとミリア(カンヌで毎年行われるIT版のカンヌ映画祭、TC50はIT版のサンダンス映画祭だと主催者は述べてますが)のような国際見本市(トレーディングだけでなく、優れたコンテンツに対する賞の授与など文化交流の側面も大きいのです)を通じてネットワークする拠点がフランスだったからで、デジタル文化のハブ的な役割をパリが担っていた訳です。
つまり、新しいメディアの新しいレギュレーションやフォーマットを構築する思考能力がそもそも地力として優れているのだと思うのです。

彼らは最初からそれをエコノミーだけでなくカルチャーとして考える姿勢がベーシックにあって、それが良くも悪くもフランス的テクノフェティシズム(経済的合理性のみに凝り固まらない)を彩っている気がするのです。

日本は、アトムやドラえもんの昔からテクノロジーの未来について非常にオプティミスティックかつソフィティスケートされた感性をずっと醸造してきたし、その成果として高度なロボット技術や独自のガジェット文化を形成してきた。その感性的な下地はフランス人のマインドと相当ダブる気がするし、共鳴現象のような相互作用が起こってもおかしくない気がします。
だけど、ことウェブに関しては米国の後追いを抜け出せる契機が無いままここに至っていて、だからこそモバイル・サービスについては「日本の携帯はガラパゴス!」的な決めつけ範囲内にじっと安住せずにもっと積極果敢なアクションに挑むべきだと思う。せっかくここまで期待されているのだから(これは米国でも同じ)意欲的な新興企業にとって海外への進出機会は本当に恵まれていると思う。

関係ないですけど、ブイグテレコムチームってグランツール出場資格があって、しかも日本人選手が在籍しているのですね!これは史上二人目(最初は今中選手→あの時は感動しました)の日本人ツール出場選手誕生のチャンスか!?

いや、でも、考えてみれば、グランツールもそもそもは新聞社のイベントで始まりながらも、歴史的には一企業の営利事業の枠組みを超えて世界的な自転車競技の原型、フォーミュラになったのですから、やはり彼らはそういった仕組み仕掛けを生み出す天性の才能を持っているのでしょうね。
そういえば、ワールドカップ主催団体のFIFA初代会長はフランス人。FIA(F1の主催団体ですね)は本部がフランスにあり、近代オリンピックの父クーベルタン男爵もフランス人でした。

あと、蛇足なのですが今回ご招待頂いたNetexplorateur 2009では、実はフランスからの選出企業は一社も存在しない。どころか、欧州からはドイツ一国だけで、むしろアジアやアフリカからの方が選出技術が多いのです。そういう懐の深さは、とても素晴らしいなと思います。米国でのこういったイベントでも、ここまで俯瞰的なキャッチアップを試みているところは無い気がしますし、例えばアジアでやる場合なども、やはりアジアおよびアメリカ中心の選出になることが多いですから。僕自身ヨーロッパのウェブ事情なんて皆目分かりません。