事情通の友人から「井口さん、ベンチャーキャピタリストの評判悪いよ!」と言われてドッキリした。

彼に言わせると、僕は「閉鎖的で誠実じゃない」との評判だそうなのだけど、実際にはTC50以降お会いしたキャピタリストの方はほんの数名で。基本的にはほぼ全てお断りしている。すると、その「お会いしない事」がそもそも「閉鎖的で不誠実」ということなのかな?と思った。

でも、表現方法はともかく「まだまだ投資対象にはならない」旨メールで丁寧にお伝えして慇懃にお断りし続けてきたつもりなので、問答無用にシャットアウトをしてきたとは思っておらず、どころかスピーチの機会などでは積極的に情報交換をし続けてきたつもりだった。

ただ、「資金需要がありませんか?」とい、う本来なら非常に有り難いお問い合わせにはもっとちゃんと面談させていただくなど、ひとつひとつしっかり対応すべき!という個別対応ができなかったのにはそれなりに理由がある。
それはTC50以前のプロトタイプ開発時に複数のVCさんとやりとりした経験を通じて感じたことがベースにある。

とにかく事業計画と本番製品のない状態でキャピタリストさんと出資についての検討を継続するのには無茶苦茶時間が掛かるのだ。下手するとそのための準備と対応だけで時間がつぶれてしまう場合もある。にも関わらずシード段階に得られる資金は微々たる物で、それさえ得られれない可能性も高い。

でも、それはある程度やむを得ないことで、プロトタイプやコンセプトシートの段階(事業計画すら無い)では、余り真面目に出資検討をしてもらえない。特にセカイカメラの様なプロダクトアウト型の製品はそうだ(事例がないので比較検討が困難)。だからTC50以降はずっと製品開発と事業計画立案に全力投入する為、ファイナンス関係の折衝を全部後回しにしてきたのだ。

ところが、ようやくアルファ製品と事業計画書を形にした所で、今度はもっと大変な障壁にぶつかってしまった。細かい事をはぶいておおざっぱにまとめると、国内VCでは海外市場向けの展開を積極的に支援しているところが圧倒的に少ないことと、国外VCは、逆に日本のITスタートアップの海外展開をはなから相手にしていないという事だ。

でも、これらも根拠があって、まず国内VCはファンド規模が総じて小さくキャピタリストの海外経験も乏しいうえ、国内市場がそれなりに規模が有るため海外市場への積極進出を支援する際のバックグランドを形成するインセンティブがそもそも無かった。
そして、海外VCにしてみれば、シリコンバレー中心のウェブ生態系以外から新しいシードを探して投資育成する価値が見いだし得ないということに尽きるだろう。

考えてみれば、TC50出場時の仲間達(つまりシリコンバレーのITスタートップ達)はまだまだシードの段階なのに数億のファイナンスを受けており(※これは下手すると国内IT企業が新興市場で獲得する資金に匹敵する!)、まずもって資金的なベースが全く違っていた。

それに事業資金の市場だけでなく、開発者や経営陣の人材市場やITサービス同士の提携に関しての機会コストも圧倒的に少なくて済むので、そういった意味でも海外市場で事業展開するときのベースがまるで違う。極端な話、歩いて行ける距離で戦略アライアンスが組めるシリコンバレーのアドバンテージは相変わらず大きい。
であれば、海外でのビジネス経験が乏しいとかサービスの海外向けローカライズといった目先の見え易い事象に限らず、経営資源やエコシステム構築の為の事業環境などトータルに考えて国内ITスタートアップに投資するメリットはほとんど無い。

具体的に頓智・およびセカイカメラにフォーカスして考えてみると、まず頓智・そのものが海外展開の為の人材組織を有しておらず(海外進出の意欲は満々ですが)、セカイカメラに関しても従来のウェブエコノミーを乗り越える様なポテンシャルを(仮に)有していると前向きに評価されたとしても、拡張現実型の収益モデルを確立した事例などそもそも無いい。それにそれ以前にオープン型モバイルサービスで収益構造を立ち上げて成功したワールドワイドの事例など一切無いので、まずもって投資判断のためのリファレンスが存在しない。

そういったことをもろもろ考えたときに、じゃあ日本のITスタートアップに未来が有るのか?という極論に進むと、本当に出口が無い状況を再確認せざるを得ない。
なので、「印象悪いよな!」だった頓智・(というか私!)がもう少しキャピタリストの方々とお話する機会が今後増えるとして、でもそこでやりとりされるのは相当タフでシビアな内容にならざるを得ない。

といった感じでマイナス要因ばかり書き連ねてきたのだけど、頓智・のようなスタートップの場合は、全く新しい事を身軽に遂行できるフットワークとネットワークだけはある(というか、それしかない)。
頓智・の場合も(1)目前の事業環境は行動によってどんどん書き換えられる=ARコンテンツ+サービスの分野は未開の大地であり、(2)日本の3Gケータイコンテンツ市場およびアップルのAppStoreの事例読み替えはいくらでも可能=投資アンドリターンの見積り(リスクの勘案)は考え方次第で出来る。と、考えている。

ですので、このベンチャー投資氷河期こそチャンスと捉えてアンビシャスな分野を共に切り開きたいという意欲をお持ちのキャピタリストの方々は、ぜひ頓智・のドアを叩いて下さい。場所は日本橋人形町です(岐阜県大垣市は研究開発拠点)。

あと、最後になりましたけど、この厳しい事業環境下でお付き合いいただいた関係各社の皆様には深く御礼申し上げます!

2009年は2月以降どしどし実際の製品を仕掛けていきますし海外展開以前に国内でも面白いことを提案していきたいと思っていますので、これからパートナーになっていただける方々含めて引き続きよろしくお願い致します。
真面目に頓智で世界を変えてこうと考えていますので、至らない点は多々有ろうかと思いますが(そんなに印象悪く思われていたとは!)、なんとか勉強しながら成長したいと願っておりますので、遠慮なくがんがんご指導いただければと存じます。

Please keep tonchi with us !!